SEのためのプロジェクトの引き継ぎ計画・内容

システム開発等のプロジェクト遂行を、現行チーム(旧チーム)から新チームに引き継ぐための注意事項や資料作成について説明します。

引継ぎ計画

  • 早めに顧客へ説明する。
    旧チーム側はとかく、残タスクのクローズに意識が行き過ぎて、引継ぎのことは忘れがちです。顧客からすると、きちんと引継ぎが行われるのか?、プロジェクトの進行が止まらないか?を懸念します。そのため、リーダーは可能な限り早く、引継ぎの計画を顧客に説明する必要があります。
  • 引継ぎの主体は旧チームが基本となる。
    引継ぎの説明は、現状をよく知る旧チームが担当するのが基本だと思います。しかしながら、今後の責任を持つ新チームから説明するのも良いと思いますが、顧客等から現状の詳細を確認された際に説明できないので、旧チームのメンバの同席も必要だと考えます。
  • 新チームで使うリソースは早めに準備・申請する。
    新チームでタスクを実施するためには、作業用PCの調達やVPN接続設定、課題管理システムにアクセスするためのユーザーアカウント等の準備が必要となります。このような準備には、申請から数日から一週間以上かかる場合もあるので、早めの申請が必要です。
  • 新チームの契約上の開始日を把握する。
    少なくても契約上の開始日から新チームが何らかの形で作業する必要があります。前述のように、作業PCがない、VPN接続できない、下請け企業の契約上の開始日が遅い、等の自社やパートーなー企業の都合で作業ができないと、契約上のトラブルになる可能性があるので、注意が必要です。
  • 引継ぎ計画の概要
    引継ぎ計画では「旧チームがいつまで主体で活動するのか」「新チームがいつから主体で活動するのか」「旧チームのサポートはいつまで続くのか」だと考えます。この内容に合わせて、主体となるチームが、打ち合わせ進行や進捗報告を実施するイメージです。
  • 引継ぎ計画の内容
    最低限の引き継ぎ計画は、パワーポイントスライド1枚程度で、引継ぎの方針、引継ぎのタスクとスケジュールの概要を説明する程度です。

    概要詳細
    引継ぎの方針(進め方)「1週目は旧チームが主体、2週目から新チームが主体」「旧チームのサポートは1か月間」等のように、計画の方針を明記します。この方針に沿って、後続のタスクやスケジュールを決めていきます。
    旧チームからの説明タイミング旧チームでの、案件概要の説明、個別タスクの詳細の説明、のタイミングがスケジュールで分かるようにします。
    新チームの作業予定新チームでの、既存資料の把握、個別タスクの詳細の把握と検証、新スケジュールの提示、タスク着手、等のタイミングがスケジュールで分かるようにします。
    既存作業の進捗状況「全量は50件、着手が10件、完了が40件」等のような進捗状況や、その管理や報告方法の説明が必要な場合もあります。

引継ぎ資料

  • 段階的な説明と引継ぎ
    最初に説明すべきは、プロジェクト全体の話と、旧チームの作業範囲、だと思います。新チームの作業範囲が異なる場合、その差異も考慮した説明が必要です。新チームがある程度の概要・前提等を理解したら、次のは、個別タスクの具体的な説明・引継ぎ、になると思います。
  • 新旧チームの切り替えの背景の把握
    顧客や自社でプロジェクトに参画する目的が決まっている場合が多いので、次の例のような背景や目的を把握しておくことが重要です。

    • プロジェクトオーナーとなる顧客が、特定ベンダへの依存を避けたい。
      (マルチベンダでの協調作業。)
    • 既存チームのスキルが足りない。自発的に行動できない。
      (積極性が求められる。)
    • プロジェクトに参画することで、自社として新しいノウハウ・ハウツーを獲得できる。
      (ナレッジを持ち帰るマインドが必要。)
  • 残タスクは何か?
    タスクの引き継ぎのメインは、作業途中のタスクになると思います。それらは中途半端に進んでしまっているので、何がどこまで終わっているのか?=残は何か?を引き継ぐ必要があります。
    作業前や完了しているタスクに関しては、引継ぎが必要かどうか検討が必要になります。
  • 運用ルールは誰が作ったものか?
    各種のルールを引き継ぐことなると思いますが、活動を進めていくとルールを改善したくなる場合もあります。そのような場合、独自に変更して良いのか、それとも顧客への確認が必要なのか?を判断できるようにするため。
  • 典型的な引継ぎ項目の例
    プロジェクト開始時にプロジェクト計画書が作られる場合が多いので、プロジェクトの概要はそのような既存資料を使うと手間が省け、正確になります。

    概要記載内容の例
    案件の背景・目的解決したい課題、目的、実現方式
    システム概要システムの機能、システム構成、使用製品、外部システム
    作業範囲旧チーム/新チームの作業範囲(新旧チームで違う場合がある。)
    体制引継ぎ前後の体制、責任者、意思決定の確認先
    スケジュール・進捗状況タスク一覧・工数、未着手/進行中/レビュー中/完了数
    プロジェクト管理方法スクラム、スプリント単位、タスク・課題・進捗管理方法、成果物の場所
    最初にやるべきこと最初に理解/実施すべき事柄・手順、開発環境の構築
  • 新チームの典型的な最初のタスクです。
    引き継ぎの準備や説明がすぐにできない場合は、このようなタスクを準備しておくと、新チームの非効率的な時間を削減できます。読み物系のタスクは、漠然としていて浅い学習になりがちです。そのため、割り当て予定のタスクや担当を事前に決めることで、目標や範囲が明確になり、定着度が高い深い学習が可能になります。
    もし、説明の資料が整っていない場合、今後のためや齟齬をなくすために、旧チームからの説明を新チームで資料にまとめる進め方もあります。

    概要詳細
    成果物や参考資料の確認要件資料、設計・実装資料、議事録、技術資料等。
    調査結果旧チームからは、権限付与や成果物場所が必要。
    資料が多い場合、その中で優先的に確認した方が良い資料も明示する。
    成果物のビルド・実行方法の確認git等のリポジトリからのビルドや開発・テスト環境へのデプロイ手順の確認。